ある1年1組の読み聞かせの記録(1)2007年03月05日 14時37分33秒

小学校の図書室の職員をしていた時、低学年の週1回の「読書」の時間にはまず私が読み聞かせをするというパターンが定着していました。「読書の時間」といってもぴんと来ない人も多いかと思います。あるいは、小学生のお子さんを持っていても、「そんな時間ないわよ」という方も多いでしょう。そう、それほど確立された時間ではないのです。遅れている授業があればそっちに振り換えたりしてしまう、担任の先生によっていかようにもできる時間です。

始まりは、担任の先生が育児休暇中のクラスでした。臨時の先生が、「読書の時間の最初に読み聞かせをしてもらえますか」と頼みに来たのです。それまでは、本を返却して新しいのを借りたら一人一人静かに読書というのがその時間の使い方でした。私は喜んで承諾しました。

次の年、「うちの組もお願いします」という先生が増えました。それでもまだ1、2年生全部ではなく、読み聞かせは自分でするので読書の時間は静かに読むだけがいいという担任の先生もいました。また次の年、希望が増えて1年生2年生それぞれ3クラス全部、合計6クラスに読み聞かせをすることになりました。最後の年も、2学年すべてのクラスからお願いされ、しかも1年生は人数が多くて4クラス!1週間に7回というのは結構ハードでした。その合間に他の学年が調べ学習に来ますし。

何を読んだかだぶらないように、書名をメモし続けました。今となっては懐かしい思い出ですが、貴重な記録でもあります。参考になればと思い、明日から少しずつ整理していこうと思います。

ある1年1組の読み聞かせの記録(2)2007年03月06日 16時47分17秒

4月、1年生にはまだ図書室の本の貸し出しをしません。ひらがながある程度書けるようになったらね、ということです。人数の少ない学校でしたら、先生や図書室の職員が代わりにカードに書き込んでやればすむのですけれど。まずは、図書室では静かにしましょう等のルールを知ることから始めます。

読み聞かせは幼稚園や保育園でも盛んに行われているので、特に違和感はないようです。それでも最初に選んだ絵本は、長くなくて、楽しく、わっとわく2冊。

「おばけパーティー」  ジャック・デュケノア作  ほるぷ出版
「せんたくかあちゃん」  さとうわきこ作  福音館書店

この2冊にした理由は他にもあります。読み聞かせによく使われる本は、早めに選んでおこうということです。保護者による読み聞かせが、月に1回朝行事の時間に教室で、週に1回昼休みに図書室で(こちらは聞きたい人だけ)行われています。年によっては、図書委員会が1、2年生に読み聞かせを実施する事もあります。もちろん、同じ絵本を何度読んでもらってもいいものですし、違う人が読むとまた趣が違います。なるべく「その本知ってる!」という声をあげさせないというのは、単なる私のシュミ、いえイジですかね。

「せんたくかあちゃん」は有名なので、内容紹介はパスします。
「おばけパーティー」は、お城に招待されたお化けたちが、お料理を食べるごとに色が変わっていく、とっても楽しい絵本です。本が小さいので、広い会場で使うにはちょっと不向きです。ただ、この本をそのまま紙芝居にしたものがほるぷから出ていますので、図書館で借りて使うのも手です。
私は、絵本をそのまま紙芝居にするのはあまり感心しないのですが、「おばけパーティー」は雰囲気がそのまま伝わるのでいいと思っています。

ある1年1組の読み聞かせの記録(3)2007年03月07日 15時24分55秒

次の週(のはず。すみません、なにしろ日付も記入しないで書名だけ読んだ順番にメモしてあるので)に読んだのは、

「おりょうりとうさん」  さとうわきこ作、 フレーベル館
「おかえし」  村山桂子 文、 織茂恭子 絵、 福音館書店

お父さんを主人公にした絵本は増えつつあるものの、「おりょうりとうさん」のような無条件に楽しいのはまだまだ少ないような気がします。お父さんが、今日は自分がカレーを作ると宣言したら、野菜等の食材もお鍋等の台所道具も「とうさんじゃいやだいやだ」って逃げ出しちゃうんです。それを投網でぱっと捕まえて手際よくお料理。そうしたら母さんと子ども達も、父さんの作ったのじゃ嫌だって逃げ出して、これまた投網で捕まえられる。しかたなく一口食べてみると、とっても美味しい!次の日、父さんが会社へ行こうとすると、昨日は逃げ出した道具などが手のひらを返したように「とうさんじゃなきゃ」ってぞろぞろ後をついてくるのでした!!

「おかえし」は、しつこい絵本として有名です。キツネのお母さんが引越しの挨拶に苺を持っていくと、タヌキのお母さんはその返礼の品物を持って行き、さらにそれに対して、という無限に続くお返し合戦。どう決着が付くかは、読んでのお楽しみ。くれぐれも、「おかえしのおかえしのおかえしのおかえし」とページをめくる度に増えていく「おかえし」の数を間違えたり、面倒くさがってとばしたりしませんように。子どもはちゃんと数えています。時には唱和してくれます。
また、この絵本は高学年の読み聞かせにも向いています。親がお返しに頭を悩ませているのをわかってくる年頃ですから、おかしみも増すようです。

ある1年1組の読み聞かせの記録(4)2007年03月08日 15時57分39秒

前回紹介した「おかえし」のネタバレになってしまいますが、大団円を迎える前、お返しがエスカレートしてもう何も持って行く物がなくなり遂に自分の子どもを連れてっちゃうんです。ここで「えーっ!」となるのもお定まり。しかも型どおりの、つまらないものですがという言葉も添えられるので、「ひどいー」と囁き合う言葉が聞かれることもあります。この1年1組の時ではなかったのですが、子ども達より一緒に聞いていた担任の先生の方が先に反応した時がありました。先生の出した声に驚いて、何人かの児童が振り返ったほどです。その先生ちょうど3人目の育児休暇明けでした。私だって初めてこの絵本を読んだ時にはびっくりしたものです。でも、心の底から心配しているお顔に、負けたーって思っちゃいました。
さて次です。

「わたしのワンピース」  にしまき かやこ作  こぐま社
「ラチとらいおん」  マレーク・ベロニカ作 福音館書店

お花畑の中を通れば模様が花柄に、原っぱでは草の実の模様にかわる「わたしのワンピース」、一緒に歌を口ずさみながら歩きたくなってしまいます。鳥の模様になったらあら不思議…。

「ラチとらいおん」は、40年以上前の絵本ですけれど未だに古びない絵本ですね。テーマが永遠のものだということもあるのですけれど、最小限しか描き込まれていない単純化された絵のおかげかもしれません。文明の利器や服装は念入りに描かれると時代が特定されちゃいますからねえ。
それはともかく、ラチという世界で一番弱虫の男の子が、小さな赤いライオンに助けられて少しずつ変わっていくのが嬉しい絵本です。いつもポケットの中にライオンがいてくれる、安心できる存在が必要ですよね、子どもには。
終盤の、ライオンからラチへの手紙が好きです。このページを読む時、いつも幸せな気分になります。

ある1年1組の読み聞かせの記録(5)2007年03月09日 15時37分52秒

メモによると、次は1冊だけしか書名がありません。たいてい2冊、まれに3冊読むことにしているのですが、時々こういう事があります。多分、前の時間の後片付けなどがおして、揃って来るのが遅れてしまったので1冊だけにしたのでしょう。あるいは、急に担任の先生が早退することになったので次の時間図書室に行かせてもいいですか、なんて言われてあわてて棚から1冊取り出したのかもしれません。

「わゴムはどのくらいのびるかしら?」  
   マイク・サーラー文  ジェリー・ジョイナー絵   ほるぷ出版

読み聞かせにとても重宝する絵本です。必ずうけます。読むのに時間がかからないので、終わりの1冊として使うもよし、始まりに読んでがっちり心をつかむもよし。
ぼうやが、輪ゴムがどれくらい伸びるか試して行きます。ベッドのはしに引っ掛けて、部屋を出て、家を出て、国を出て、遂にはっ!最初は粗いタッチで描かれている絵が、だんだん細密にリアルになって行くのも手伝って本当に伸びてるように思い込んじゃいます。いや本当。
オチはちゃんと付いてますが、読み聞かせでは細かい絵まで見えないので、じっくり絵本を読み込んだ人だけ子ども部屋においてあるおもちゃを見てうふふと笑ってください。

ある1年1組の読み聞かせの記録(6)2007年03月10日 15時38分46秒

お次は

「キャベツくん」   長新太 作、 文研出版
「ぶたぬきくんしまへいく」 斉藤洋 文、森田みちよ 絵、佼成出版社

名作「キャベツくん」に説明は要らないと思いますが、とにかくブキャっと叫びたくなるような楽しさですね。
読み聞かせ仲間のお母さんの中には、この絵本が嫌いって言う人もけっこういるんですよ。例えば、最後のページの「よだれが…」っていう文が耐えられないという人、長新太のどこがいいのかわからないと言う人まで。わからないけれど子ども達が喜ぶから読んでるのと悩める顔つきで告白してきた友人には、「それはあなたがまともな大人の証拠。問題なく子ども時代を過ごして健全に成長した証よ」と慰めるのでした。そうなのです、子どもと同じ感覚で子どもの本の良さがわかるのは、ガキのまんま成長しない部分を引きずっているからです。子どもの頃の問題を抱えたままという代償を払ってるがゆえに、絵本や児童書に対する感覚が研ぎ澄まされているという人は多いと思います。子どもの本の書き手も多くはそうなのでは?いい意味では純真というかなんというか、むにゃむにゃ。

思わずいっぱい書いてしまいました。「ぶたぬきくん」シリーズは、ちょっと長めの説明が必要なので明日にします。