読み聞かせ草子(13)2008年07月31日 17時30分19秒

暑中お見舞い申し上げます。
蒸しますねえ。こんな時は楽しい絵本を読み聞かせしましょう。
もっとも、たいてい私の選ぶ本は楽しい系ですけれど。

『ガブリエリザちゃん』  H・A・レイ 作、 文化出版局

研究所に連れてこられた食虫植物のガブリエリザちゃん、
お肉なら何でもいいので、人のお尻もかじっちゃったりして
たいへんです。
あまりに手を焼かすので、庭の小屋につながれてしまいます。
そこへ泥棒がやってきて…。

レイの絵がまた良いのです。植物なのですが、意思を持って
お肉にかぶりつくガブリエリザちゃんの身をくねらす姿の
描き具合が何とも言えません。
名前の訳し方もぴったりです(訳者は今江祥智さん)。
原題は「ELIZABITE」。bite噛むと引っ掛けてあります。

読み聞かせ草子(12)2008年06月18日 16時26分56秒

シビル・ウェッタシンハの絵本をもう1冊紹介しましょう。

『かさどろぼう』 シビル・ウェッタシンハ作、ベネッセ(現在は徳間書店から出版)

村ではまだ誰も「傘」を知りません。雨が降ればバナナの葉や布をかぶります。キリ・ママおじさんは町へ出かけて、初めて傘という物を知り、喜んで買って帰りました。
ところが、帰ってきてバス停の傍の茶店でコーヒーを飲んでいる間に傘がなくなってしまいます。どうしても皆に傘を見せびらかしたいおじさんは、何度も町へ傘を買いに行きますが、その度に盗られてしまいます。
おじさんは一計を案じて、傘に細かく切った紙を詰めておきました。

泥棒は誰で、取られたたくさんの傘はどうしたか、楽しくてうふふとなる絵本なのですが、公民館の読み聞かせで泣かれてしまったことがあります。
その時もお客さんはほとんどいなかったと思います。「かさどろぼう」を読み始めてわりとすぐ、男の子が「こわい」といってお母さんにしがみついてしまいました。お母さんの方が驚いてしまって、一生懸命なだめていました。
幼稚園の年少さんくらいかな、その子にとっては、この絵がとてつもなく怖かったんでしょう。家の子は大好きなのに、感じ方がずいぶん違うものです。
そういえば、別の作家(日本人)の作品でやはり家の子が好きな絵を、
「この絵は私にはダメ」と言った人がいましたっけ。その人は大人でしたが。
本当に好みは人それぞれです。

読み聞かせ草子(11)2008年05月27日 16時58分17秒

小三の時に作った本の帯
またまたしばらくぶりになってしまいました。
今回も公民館で読み聞かせに使った事のある絵本を紹介しますが、
実はこの本、一番読み聞かせたのは家でです。上の子が大好きでしたので。

『きつねのホイティ』 シビル・ウェッタシンハ 作、福音館書店

スリランカの小さな村に、くいしんぼうギツネのホイティがやってきました。家の裏の物干しにかかっていた洗濯物を着込んで、旅人の振りをしてまんまと食事にありつきました。
キツネだとわかって知らない振りをする村のおかみさんたちは、調子に乗ったホイティを懲らしめようと策を練ります。

リズムよく繰り返されるお話、ウェッタシンハの独特の絵、ホイティとおかみさんたちの騙しあいの楽しさ、何度読んでも飽きません。
スリランカの民話なのかなと思ったのですが、どうも創作のようです。日本にもよくある創作民話とでも言ったらいいでしょうか。

上の子は、こういう民族色豊かな絵柄が好きで、この絵本はかなり長いこと「一番好きな本」の地位にいました。学校で好きな本の紹介をする時は必ず『きつねのホイティ』。3年生の国語の授業で「本の帯を作る」というのがありましたが、その時もホイティ。絵もずいぶん描きました。
スリランカに行ってみたい、中に出てくる料理を食べてみたいとずっと憧れておりました。料理に関してはそのうち、実は自分が苦手とする部類の食品だとわかって言わなくなりましたが。

楽しく読み聞かせしてみてください。「ホイティ トイティ ホイティティ!」というフレーズが頭から離れなくなるかもしれません。

読み聞かせ草子(10)2008年04月24日 15時42分12秒

小学校だけでなく、公民館でも読み聞かせボランティアをしていました。まだ赤ん坊だった下の子を連れて始めたのだから、年数で言えば一番長く続けたことになります。
月1回、土曜日の午後に公民館の一室で行っていましたが、最初のうちはある程度の人数が集まりました。それがだんだん来る人数が減り、読み手のほうが多いこともあったり、誰も来なくてうちの子たちだけに読んでもらったりということもありました。
減った原因は土曜日が完全に休みになったことや、他の楽しみがいろいろ増えたこと、そして本当はこれが大きいんだと思いますが、私達が特に何も努力をしなかったこと。読み聞かせる本についてちょっと勉強しようとか、そういうことはいっさいしなかったので。
低年齢化も激しく、小学生がこなくなり、幼稚園児が来なくなり、遂に赤ちゃんが一人だけという日までありました。もともと何歳の子が何人来るかわからない公的な場所での読み聞かせでしたので、カバンにはいつも簡単なのから少々長い絵本までいろいろ入れてありました。
そんな中の幼い子向けの1冊がこれです。

『ぎょうれつぎょうれつ』 マリサビーナ・ルッソ作、徳間書店

ごはんですよって呼ばれると、ぼくは遊んでいた積み木を並べて行列を作りながら台所へ向かいます。積み木がなくなると他のおもちゃやいろんなものを1列に並べながら。部屋も廊下もずっと行列が続きます。

楽しい!私もやってみたい。
子どもって、物を並べるのが好きですよね。並べ方にも大人がわからないこだわりがあったりして。
幼い子はもちろん、少し大きい子でも結構喜んでみてくれる絵本です。行列がどこまで続くのか見届けたいですものね。

もしもこの本を読んでやって、子どもが真似をして家中に行列を作っちゃったらどうしようと心配している親御さん、中に出てくるお母さんを見習ってくださいな。

読み聞かせ草子(9)2008年04月23日 13時28分27秒

私はわがままな性質で、読み聞かせに使う本は自分で好きに決めたい方です。でも、場合によっては、リクエストにこたえなければなりません。他所の小学校で行っていた読み聞かせは、学校主導で始められ、有償ボランティアが集められました、主に公民館の読み聞かせグループから。
ある年、新しく来た校長先生から12月は人権週間に関連した本を読んで欲しいと要望がありました。私は正直「えーっ、やだー」と思いましたよ。12月はクリスマスの絵本を読みたいじゃん。
でもまあ反対も出来ませんから、本選びに頭を悩ませました。そこは小規模校で、毎年6もしくは7学級、結局そのうち3つの教室では「さっちゃんのまほうのて」が読まれました。ある人は、ブックトーク形式にして何冊かの本を紹介していました。
私はどうしたかというと、ある程度楽しめる本をということで前回(といってもずいぶん前ですね、すみません)紹介した「せかいのひとびと」をまず読みました。これだって広い意味で人権になりますよねえ。そして2冊目は、ちょいと衝撃的な絵本にしました。

『はせがわくん きらいや』 長谷川集平、温羅書房(現在は ブッキングから出版されています、昔はさらに別の出版社から出ていたこともあり)

体の弱い長谷川君に困らせられるぼく、その気持ちがストレートに表現されているとしか言いようがありません。
出来れば図書館で手にとって、皆さんそれぞれの思いで受け止めて欲しい絵本です。

ヒ素ミルク事件のことも何も説明せず、ただこの絵本の持つ力を信じて読み切りました。大嫌いという言葉の後ろに何か感じ取る子もいたかもしれませんし、よくわからなかった子も多かったでしょう。
驚いたのは、読み終わった私に担任の先生がすっと近づいてきて「いい本ですね」と言ってくれたこと。この先生が声をかけてくれたのは2回目です。前に「これはおひさま」(福音館書店、現在はブッキングから出版)を読んだ時、「全部覚えているんですか?」と聞かれた事があります。その時は、いつもより念入りに練習してよどみなく言葉遊びを披露しましたから、そう質問されて「やった!」と思わず心の中でガッツポーズしました。だってね、この先生、毎回読み聞かせの間中ずっとテストの丸付けしていたんですもの。普通は先生は子どもと一緒になって楽しむか、興味なくても少なくとも他の仕事はせずに児童の様子を見てるものです。ですから、絶対に丸付け止めさせてやるという意気込みで用意して、「これはおひさま」を読みながら、いえ暗記してますから正確には読まずにページが間違ってないかどうかだけチェックして目の端で先生の様子をうかがってました。途中で赤ペンを持つ手がとまったのでしめしめでした。
実はこの先生の前任校はうちの子の通っていたところで、同級生のお母さんから変わった先生だといろいろ聞いてまして、しかも1年で転任していったから憶測もよびました。確かに芸術家肌で、わが道を行くというタイプなんだろうと思ってましたが、それだからこそ「はせがわくんきらいや」に敏感に反応してくれたのかもしれません。

私は、この小学校での読み聞かせは数年でやめてしまいましたが、きっと今でも12月は人権週間にちなんでいることでしょう。一度そう決めると、なかなか止められないと思います。探せば「人権」そのものが主題の絵本もあるし、たまにはテーマが決まっているのもいいかもしれません。でも、やっぱりクリスマスの絵本読みたかったなあ。

読み聞かせ草子(8)2008年03月14日 16時05分42秒

ピーター・スピアーの本で私が一番読み聞かせに使っているのは、
実はこの絵本です。

『せかいのひとびと』 ピーター・スピアー 作、評論社

地球上にはたくさんの人がいて、色々な国があって、
文化がそれぞれ違う。こちらで当たり前なことが、
むこうではおかしなこと、その逆もある。

同じじゃないってのはとても素敵、ということを
見て楽しく、そしてたった1冊、41ページで
表してしまった絵本です。

目や鼻の部分だけたくさん描かれたところでは、ちょっと
ドキッとし、形や色だけでこんなに違うんだと思い、
家や遊びや文字も様々だと面白がりながら、時々
同じ所もあるなあと思ったり。見返しの地球の絵を
眺めてから本を閉じると、なんだかほーっと大きな
溜息をつきたくなります。

全くお説教くさくないところが好きで、小学校での読み聞かせには
よく使いました。去年は中学校の読み聞かせにも重宝しました。
時間がなければ途中の文を読まずに絵だけみせてもいいし、
少人数だったら、絵の細かいところを指してちょっと脱線しても
いいし(日本が描かれている部分、微妙に違うよね、なんて)。
初っ端の世界の人口が60億人というところは、「今は○○人
だよね」とか「何人って習った?」と添えれば一生使えるでしょう
(それとも増刷するごとに変えてるのかしら。未確認です。私の
は1999年の18刷り)。

もっと詳しく語りたいのですが、皆さんが読む楽しみを減らしても
いけないのでこのへんにしておきます。
『せかいのひとびと』と前回紹介した『きっとみんなよろこぶよ!』
の他にもスピアーの絵本はたくさん出ているので、きっと見かけ
たことがあるんじゃないかと思います。『雨、あめ』だとかそれから…。
スピアーは、「スピア」「スパイアー」という表記の場合もあります。